「音」楽に「専」らのめりこみ「満」足と「充」実を多視点から伝えるブログ
 
WOMCADOLE『今宵零時、その方角へ』インタビュー
スクリームさんにて、WOMCADOLEの1stフルアルバム『今宵零時、その方角へ』のインタヴューを担当しました。
http://skream.jp/interview/2018/03/womcadole.php

WOMCADOLEのインタヴューは2回目。初対面は『今宵零時〜』にも収録されているシングル『アオキハルヘ』のインタヴューでした(厳密に言うと樋口さんとはその前に一度対面しているんだけど)。もしよろしければこちらも読んでね。

WOMCADOLEについてはワンタンマガジンでも2017年ベストアーティストとして取り上げていて、こちらの本文中にはわたしが思う彼らの秀でているところを列挙しております(さっき読み返してみたけどなかなかいいテキストだった←自画自賛)。2017年、彼らは2010年代後期のギター・ロックのセオリーやカテゴリーから脱し、オリジナリティへの第一歩を踏み出しました。『今宵零時、その方角へ』では、現段階でのそれが高い温度で封じ込められていると思います。

ひとりのフロントマンが圧倒的なカリスマで、あとのメンバーはそれについていく――そういうスタイルのバンドも多いかと思います。だけどわたしはなんせ中学時代にBLANKEY JET CITYとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTで育った世代なので、メンバーの個性やキャラクターがぶつかり合うことでひとつのものを作り上げる、互いの個性が互いを高め合うバンドに魅力を感じてしまいます。思い起こせばThe BeatlesやThe Rolling Stonesだってそうじゃないですか。昔もいまも、第一線でロックやロックンロールをやっているバンドって、そういうバンドだと思うんです。

『今宵零時、その方角へ』はいままで以上にメンバーそれぞれの異なる個性が強く出たものでした。だからこそこのアルバムでは、みんながみんな自分の得意分野や好きな音を伸ばすことができていて、「あいつやるやん、俺も負けてられへんわ」って、全員が思えたんじゃないかな。4人の音像のうごめきが格段に上がっている。まじでONE PIECEみたいなやつらです。

樋口さんが全曲解説をするだろうなと思ったので、曲そのものを掘るのはそちらに任せて、わたしはインタヴューで「彼らは『今宵零時、その方角へ』をどんなアルバムにしたかったのか」を具体的に探っていきました。というわけでこのブログではちょっとソングライティング面について思うことを書いておきます。

今作の楽曲はこれまでとは違い、彼そのものが主人公になった楽曲ばかりではありません。だがその主人公、かなり彼と性質は近い。アルバム13曲を通して綴られているのは、愛を欲し、愛に飢えた男の人生のひとかけら。愛を求めて夜の街を彷徨うも、なかなか愛する人にも出会えず、愛したい人が現れたとしてもその想いは届かず、ある女からは「つまらない5番目の男」と言い放たれ、なにかやらかして逃げている最中、とある店に迷い込んで59630円もぼったくられ、踏んだり蹴ったりです。虚無を抱えたその男は、少しずつ過去のことや、自分の内面を見つめ直します。それがアルバムの終盤、クライマックスとエンドロールです。ラストに控える【独白】【21g】【馬鹿なくせして】の3曲が進むごとに、主人公のなかに潜んでいた樋口侑希の心の声が表に溢れだしてきます。

わたしが彼と会話をしたのはこれまで2、3回だけど、彼の作る音楽や歌を聴き、彼の綴る言葉を読んでいてつくづく思うのは、彼が感性そのもので生きているということ、野性的で素直で純粋であるということです。それゆえに目の前に起こる物事によって瞬時にハッピーにもなるし、はたまた人生終わりだと思ってしまうほどの絶望を感じたりもする。ネガティヴなときもあれば、ポジティヴなときもある。【アオキハルヘ】に綴られていたようにただひとりの人を想い続けた強い気持ちもあれば、【頂戴】のようにコロッと“若い女のお色気誘惑”に負けることもあるのかもしれない。意識していないところでもいろいろ感じているくらい、感性が鋭い人だと思います。

彼の作る曲も言葉も声もいつも泣いているようなのは、そして“生きづらさ”を抱えているのは、その敏感さ、繊細さゆえだと思います。“涙”は喜怒哀楽すべての感情の沸点ですからね。ラスト3曲は特に彼の“陰”の部分が色濃い。暗闇のなかに迷い込んで、微かな光を見つけ出すために彷徨い、のたうち回る様が、ダイレクトに伝わってきます。ですがこの“生きづらさ”こそが彼を生かし、彼を音楽へと突き動かすのだろう、とも思います。そんな彼がバンドメンバーという仲間と出会い、彼らとともに音を鳴らし、人生を共にすることにより様々な気づきを得ている――どんなにロマンチックな映画よりも美しく、どんな少年漫画よりも青春じゃないですか。だからこそ「だれかの光になりたい」「迷っている子がいるなら、いま進もうとしている道を信じてほしい。俺でもできたから大丈夫だよ」という言葉にも説得力があるというものです。

樋口さんだけでなく古澤さんも安田さんも黒野さんも音楽に対して思考が吹っ飛ぶほど本気で体当たりして、その瞬間瞬間で湧き上がる喜怒哀楽を音へと落とし込むことができるプレイヤーだと思います。技術が向上することでその表現はさらに鮮やかに色づくでしょう。WOMCADOLEというモンスターは、さらにパワーを増幅させていくことは間違いありません。彼らはこれからもただただ前を向いて、過去を否定せず、過去を繰り返さず、いまの自分に嘘をつかず、過去を超える最高傑作を生み出すべく力を注ぎこんでいくんじゃないかなと思います。関西の端っこ、滋賀から生まれたスーパーロックバンド、まだまだおもんなりまっせ!

JUGEMテーマ:ROCK

【2018.03.19 Monday 19:02】 author : sayako oki
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