「音」楽に「専」らのめりこみ「満」足と「充」実を多視点から伝えるブログ
 
OOPARTS 2016 ライヴレポート


※2016年10月31日に書いたものです。

cinema staffの自主企画フェス「OOPARTS」が産声を上げて今年で4年目。岐阜で最大キャパを誇るライブハウス、CLUB-Gにて1ステージで開催されるというDIYなフェスは、観客に「フェス=楽しいもの、お祭り」以上の概念をもたらしていると思う。OOPARTSはこれまでにplenty、KEYTALK、the band apart、LOSTAGE、04 Limited Sazabysなど、若手からcinema staffと同世代のバンド、先輩にあたる大御所まで、毎回自分たちと縁のある様々なアーティストを招聘。チケットは毎年ソールドアウトしている。このラインナップを岐阜で届けているのは、cinema staffくらいではないだろうか。今年のOOPARTSは例年にも増してエッジーなバンドが揃い踏み。音響も爆音気味で、すべてのアクトでとにかくひたすら身体に轟音が刻み付けられていくようだった。

三島想平がこの日のために制作した楽曲とともに、彼の友人でもある岐阜のクリエイター、Scott Allen作のオープニングムービーが流れたあとは、トップバッターとして岐阜を中心に活動している地元バンド、Shift Controlが登場。一部メンバーはこれまでスタッフとしてOOPARTSを支えてきたが、4年目で出演権を得た。音楽性はハードコアでもあるがポップで、変拍子を織り交ぜた轟音ギターロック。静と動で激情を巻き起こす音像はcinema staffと通ずるものがある。とはいえ単なるフォロワーに留まっていないところに次世代の価値観が感じられた。OOPARTSに出演できたことを喜び「岐阜のバンドで良かった」と語るギターボーカル・浅野暢之の姿を見て、このイベントが岐阜の若手バンドにとって全国への登竜門となりつつあることを実感する。Shift Controlの面々は満員のCLUB-Gを目の前にし、舞い上がりながらも浮足立つことはなく、堂々と自分たちの音楽を鳴らしていた。岐阜の街自体も個々のカラーが強い自営店が活性しているが、それと同様に岐阜には媚びることなく自分たちの音楽を追求しているバンドが多い。それを強く印象付ける毅然としたフレッシュなステージだった。

2番手は、意外にも今回が初の岐阜ライブだという夜の本気ダンス。1曲目「Crazy Dancer」のイントロが鳴った途端、フロア前方に駆け寄る観客多数。ワンマンかと錯覚させるほどの熱気だ。もともとcinema staffはバンド名のイメージから彼らにいい印象を抱いていなかったらしいが、「ライブ見たら“お前らかっこいいやん”みたいに言うてくれはって」とドラムの鈴鹿秋斗が初対面のエピソードを明かす。彼が何度も「2016年10月22日がこんなにも素晴らしい日になるなんて思いもしなかった」と告げたあと、バンドは「WHERE?」「LOVE CONNECTION」とパワフルにエスコート。彼らの楽曲はどれにもハッピーと同時に胸をくすぐる切なさがある。その男性特有のロマンチシズムがコミカルでスマートだ。終盤は「Fuckin' so tired」「B!tch」「戦争」と定番曲を畳みかける。安定感のある演奏と華やかなパフォーマンスで観客のハートを手堅くキャッチ。インパクトの強いリフと太いボトムのダンス・ビートでトランス状態に陥らせ続けた。

cinema staffとも親交が深い3番手のtricotは、1曲目「節約家」からギターボーカル・中嶋イッキュウが曲中で「OOPARTS!」と笑顔で叫ぶなど、年に一度の祭典を祝す。摩訶不思議な変拍子、喜怒哀楽を一挙にぶつけるような暴動の轟音、色気のあるボーカルワーク。毎度のことながらこのコントラストに翻弄されてばかりだ。突き放すようでありつつも、同じタイミングで3人が手を振り上げるなど、キャッチーな側面があるところも小悪魔的である。中嶋はMCでトップバッターのShift Controlに触れ「岐阜にもいいバンドがいる」と新しいバンドとの出会いを喜んだ。途中、ギターのキダ・モティフォがステージにDelta Sleepのドラム・Blake Mostynや、cinema staffのギターボーカル・飯田瑞規とギター・辻 友貴を呼び寄せ、いまが旬の「PPAP」を引用した「ペンウィーダスン辻ペン(※ウィーダスン=飯田のニックネーム)」でさらに会場を沸かせる。「次いつ(岐阜に)来れるかわかりません。全部出し切って帰ります」と中嶋が告げ、ラストは「99.974℃」と「おやすみ」。盟友へのプレゼントのような愛溢れるステージに、固い絆を感じた。

4番手は辻が個人で運営するレーベル「Like a Fool Records」から昨年日本盤をリリースしたイギリスの4ピースマスロックバンド・Delta Sleep。OOPARTS初の海外アーティスト出演である。サウンドチェックからそのまま「コンニチハ、ゲンキデスカ?」とフロアに声を掛け1曲目の「16:40 AM」を演奏しはじめる。まずその一音一音の出す音の強さや厚みに面食らった。海外勢の身体能力あってこそ成し遂げられるものだろうか。ギターボーカル・Devin Yuceilは曲中の歌詞を「ニホンニ コレテ ウレシイゼー!」と変え、お茶目な人間性にフロアの緊張感もじょじょに解けていく。マスロックでありながらその展開に難解さを感じさせず、むしろこちらを音に揺蕩わせるような心地よさを生むところに、彼らが頭脳以上に本能的に無邪気に音楽を奏でているような印象を覚えた。MCでは辻への感謝を告げ、ラスト「So Say We All」の前には、英語で「この日のことを忘れない」と真摯に語る。純度120%の生粋の音楽フリークの作るアンサンブルに圧倒されてばかりだった。

後半戦、5番打者であるART-SCHOOLは、飯田と辻が学生時代にコピー・バンドをしていたくらい尊敬する存在だという。グランジ/オルタナを基盤にしたソリッドな楽曲で構成されたセットリストは、OOPARTS 2016の性質を汲んだうえで、現在の自分たちのモードが最も良く映えるものだった。「real love / slow dawn」「Promised Land」「夜の子供たち」と心臓を焚きつけるような轟音を鳴らし続け、「プール」では激しい音像で繊細な感情を紡ぎ出し、観客の意識や感情を掴み続ける。これはcinema staffにも受け継がれている姿勢やスピリットではないだろうか。ギターボーカルの木下理樹はMCで最後にcinema staffと競演したのがbloodthirsty butchersの吉村秀樹の追悼イベントだったことに触れ、個人的な気持ちではあるんだけどと前置きしながら「想いを受け取ってくれたらうれしい」とフロアに語り掛けた。「スカーレット」のひりついた集中力と焦燥感は美しく、ラストの「FADE TO BLACK」は全身の力と魂までも振り絞る熱演。雷のような鋭いアクトに、ロックバンドとはかくあるべきを見せつけられた気がした。

トリ前のアルカラはcinema staffの「シャドウ」をSEに登場。いきなりかましてくれる。「いびつな愛」でスタートしたライブは、嵐のような激しさを持ちつつも、人懐っこさやすべてを包み込むような優しさがあった。新曲「炒飯MUSIC」を披露したあと、フロントマンである稲村太佑が初めて岐阜でライブをしたことに触れ「cinema staffに誘われるまで(岐阜ライブの)処女を守ってきた」と会場を笑わす。途中M&M'Sのおもちゃを取り出すなど突飛な言動も魅力のひとつだが、この音圧でもしっかりと後ろまで伸びる彼のボーカルは相変わらずの安定感と存在感だ。「アブノーマルが足りない」「半径30cmの中を知らない」と強力ナンバーを立て続けに演奏すると、稲村がハンドマイクで「俺らの処女を奪ったのはシネマだけでなく(観客の)みんなもそうやからな! 責任取ってもらわな困るで」と叫ぶ。「テキトーにワーッてゆうて盛り上がる、それが責任の取り方や!」という主人公ばりの名台詞から「交差点」。最後までフロアを奔放に引っ掻き回して、「シャドウ」をBGMにしてステージを後にするというシュールなしめくくり。MCのネタ含め、cinema staffに華を持たせる、愛溢れる40分だった。

そして大トリとなるこの日の主役であるcinema staff。これだけの強豪が集うなか、プレッシャーも大きかっただろうが、1曲目「theme of us」から地に足をつけてどっしり構えた大きなステージングで快調な滑り出しだ。「想像力」「希望の残骸」と、ひりついていて溢れだしそうなぎりぎりのラインのスリリングな躍動感で、フロアと心を通わせるように音を発していく。飯田はMCで「2016年10月22日がこんなにも素晴らしい日になるなんて思いもしなかった」と夜の本気ダンスの鈴鹿の台詞を引用して観客を笑わせた。ドラムの久野洋平は出演したバンドの名演に対して「今回の面子はゴリゴリというか。次から次へと強いやつがくる(ドラゴンボールの)サイヤ人編みたい(笑)」と語り、飯田も「これだけのかっこいいバンドが自分たちのイベントに出てくれるのは心強い」と感謝を告げる。そしてアルカラの稲村が取り出したM&M'Sのおもちゃは、cinema staffと台湾ライブに行った際、空港で買ったものだというエピソードを明かし、「今日のために持って来てくれたんだよ!」と喜びを露にした。

だが続いての「望郷」で、飯田のイヤモニにトラブルが発生。途中で再度演奏し直すも、やはり思うように歌えなくなってしまう。辻はその様子をいち早く察し、飯田の近くに寄り、彼を励ますように笑顔を向けた。飯田が咄嗟にフロアに向かって「歌ってくれる?」と言うと、観客がシンガロングで彼らの音を支えた。「白い砂漠のマーチ」では三島も飯田の状況を鑑みてユニゾンで歌う場面も。久野はいつも以上にひたすら的確でエモーショナルなドラムを繰り出す。4人が力を合わせ、崩れそうになるのを阻止しながら走り続ける姿は、手に汗握るものだった。「最後まで全力でやります」と三島が言うと「exp」。トラブルを挽回するように集中力が漲った演奏は、「overground」で感情がすべてぐちゃぐちゃになり、大泣きしているような音へと姿を変えていた。前回のOOPARTSから今回までの約1年間の彼らの活動などを振り返ると、この日に様々な気持ちがとめどなく湧き上がることは必然だったと思う。

会場が一丸となってこの日を大団円へ導こうと奮起する様子は、これまでcinema staffが音楽活動で培ってきた信頼関係から生まれた愛そのものだった。もう岐阜という場所も、OOPARTSというイベントも、cinema staffだけではなく彼らを愛する人々にとっても特別な場所になっているのだ。もともと1本1本のライブや音楽制作に真摯に向き合うバンドであるが、これだけ彼らが様々な感情をさらけ出すことができるのは、OOPARTSだけだと思う。アンコールの「海について」の前、三島が言った。「僕たちがCLUB-Gに初めて出たのは18歳のときで、そのときに一緒に出ていた先輩たちは29歳で。僕らがいまその歳になり、これからは臆することなく僕たちが岐阜のみなさんに何かを提示できる――そういう年齢になったと思います。来年もやります」。この力強い言葉の理由は、彼に来年の青写真がある程度できているからだ。いままでの彼らは良くも悪くも、現在のことを考えることに集中していて、未来というものは理想や空想の世界だった。だがいま、その未来は現実味を帯びてきている。そしてそれは霧が晴れた真っ青な海のように広大で煌めいているのだ。来年のOOPARTS、どうやら例年とは一味も二味も違うものになりそうだ。もちろんcinema staffというバンドも同様だ。「歳をとった僕等はきっと凄く美しい。歳をとった僕等はきっと凄く楽しいよ。(「overground」より)」――この言葉がcinema staffの現実になる日もそう遠くはない。
【2017.07.31 Monday 14:42】 author : sayako oki
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