「音」楽に「専」らのめりこみ「満」足と「充」実を多視点から伝えるブログ
 
青年の主張(※めちゃくちゃ長い身の上話)
ライナーノーツとは、音楽レコードや音楽CDのジャケットに付属している冊子等に書かれる解説文をいう。通常はアーティスト本人ではなく音楽ライターやレコーディング関係者などによって執筆される。(Wikipediaより)

わたしは音楽について書けるなら、それが別にどんなものだって構いませんでした。とにかく書きたいという気持ちで続けてきました。でもあるとき、たぶん2年くらい前だったと思う。少しずつ書く場所が増えてきたわたしに、母親がちょっと照れくさそうな笑顔でこう言いました。「母さんはさやこに、CDの中に入っている解説文を書いてほしいのよ。やっぱり母さんの時代だと、音楽評論家の仕事というとあれなのよね」



母はそれまで、わたしの人生に何も口出しをしませんでした。そろばんよりも英会話をやりたいと言ったら英会話に通わせてくれたし、塾が楽しいからピアノを辞めたいと言ったら、あんなに高いピアノ買ったのにあっさり辞めさせてくれた。父親が死んだあとも大学に行きたいからと言ってめちゃくちゃ授業料の高い高校に行って、資金的な問題があって大学を諦めざるを得なくて、将来についていろいろ悩んでいたときにわたしは突如「音楽ライターになりたい」と思ってしまった。それを恐る恐る相談すると、母は「いいんじゃない、向いてると思う」とこちらが拍子抜けするほどあっさりOKしてくれました。進学校に通ってエリート街道を歩いてきた意味がなにもなくなる人生選択をしたわたしに、文句を何も言わなかった。わたしが音楽媒体への就職もうまくいかず何度も諦めようとするたびに、ライターになってからも何度もくじけて辞めようとするたびに、母親は「本当にやりたいことなんでしょう?」とわたしを叱咤激励してきました。母はわたしがどんな状況であっても、ライターとしてやっていけないわけがないと思っていました。

「さやこにCDのなかに入ったライナーノーツを書いてほしい」は、そんな母がわたしに言った初めての要望でした。それは売れてはいないとはいえ「音楽ライターになる」という夢をかなえてしまったわたしの、新しい夢になりました。



2月中旬、Shout it Outのレーベル担当さんから「本当はインタヴューを載せる予定だったけれど、スケジュールやその他もろもろの事情もあり、ライナーノーツを書いてもらえないだろうか」というご相談がありました。メンバー全員が二十歳になって初めての作品であり、バンドの1stフルアルバムのライナーノーツ。そんな貴重な機会をいただけるなんて、おまけに夢に一歩近づけるなんて、こんな光栄な話はあるだろうか。とてもうれしくて、断る理由は何もありませんでした。

でも、いざ書いてみようとしたとき、何も書けませんでした。プレッシャーです。与えられたテーマは「10代から20歳へ、メンバーの環境の変化と歌詞の変遷など、歌詞の読み込みを中心に各楽曲及びアルバムの解説」。まず、わたしは歌詞を中心に論じてきたことが、これまで一度もなかったのです。おまけに歌詞について論じるということは、アーティスト――ここでは作詞者である山内彰馬という人物像を決めつけかねない。そして聴き手の歌詞の解釈を狭めるものにも成り得る。非常にリスクが高い。じゃあ彰馬くんに歌詞の意味や想いを直接聞いてみる? いや、それだけは絶対したくない。それはライターとしてのプライドでもあるし、アーティスト自身も気付いてない部分まで論じてこそだろうと思ったからです。

何度も書き出しては消し、書き出しては消し……いつの間にか4時間経過し、時刻は13時を回っていました。完全に煮詰まりました。書ける気がしなくなって落ち込みまくった。そのときに「そうだ、久し振りに海に行くか」と思い立つ。わたしはメンタルが限界を迎えると海に行く習性がもともとあるのです。おまけにジャケットも海と青空だし、リンクしてて丁度いいし。と思って出掛けました。そのときのエピソードがこの日の日記です。ここにある「とある曲」は「青春のすべて」でした。



帰ってきてから、とにかく音楽のなかにいる山内彰馬という人間に向き合い続けました。時には彼の声に合わせて歌詞を口ずさみ、叫んでみたり。書いている最中もずっと緊張していました。原稿の送信ボタンを押す手も震えていました。でもとにかく、誰も気付いていない彼を探し当てたかった。〆切は27日だったけど、彼らにとって初の全国ツアーが始まる前に届けたかったから、この日のうちに書き上げたかった。二十歳の青年ふたりの背中を煽る、風のような文章を書きたかった。

わたしが『青年の主張』というアルバムを聴いてまず思ったことは「未完成すぎる」ということでした。アルバムとしてのまとまりもなく、とにかく成長真っ只中の彼らがただただいる、のみ。こんなに純度の高いものをどう評論したらいいのかがわからなかった(だからインタヴューも難しかった)。だけどわたしは、あのふたりがいろんなひとと力を合わせて作ったこの青さしかないアルバムを、絶対に肯定したかった。そして歌詞だけでなく、細川千弘というプレイヤーにもちゃんとフォーカスしたかった。それらをすべてひっくるめて書いた結果が、あのライナーノーツです。
https://seinen.ponycanyon.co.jp/

初めて尽くしだからものすごく緊張した文章で、読み返してみると初々しすぎて笑えてくる。でもまだこんなに初々しい文章が書けるんだ、というのがうれしくてたまらなくてにやにやしてしまう。とびっきりの愛とありったけの青が詰まった、未熟なライナーノーツが書けたことが、すごくうれしいんです。完璧主義なわたしがこんな気持ちを抱くなんて変な感じです。だから読んでほしいです。未熟だなあと笑ってほしいです。生まれて初めて、ライナーノーツを書きました。

というわけで『青年の主張』はわたしにとって特別なCDになりました。特別なCDやし、シャウト東京でライヴ全然ないし、ふたりはわたしがサイン会参加したらどんな顔するだろうと岡村ちゃんみたいなことを思ったので、インストアライヴに行ってCDを買ってインストアライヴとサイン会に参加してきました笑 家に帰ったら「CD買いに渋谷に行ったってことよね?」とおかんに笑われた。わたしも「そうだねえ」とけらけら笑った。



めちゃくちゃかっこいいサイトに、おまけにふたりの写真をバックにわたしの書いた文章が載っている。こんなにうれしいことある?? すごくうれしいし、とっておきの経験です。CDのなかのライナーノーツへの夢は、気長に追っておこうと思います。母が生きているときまでには叶えられたら……。このご時世厳しいし難しいとは思うけど、夢を見るのは自由なので言わせておいてください。

彰馬さん、千弘さん、Shout it Outチームの皆様、本当にありがとうございます。そしてもうわたしのいままでの人生すべてにありがとうという気持ちです。大袈裟ではなく真剣に。こんなこと10年前は知る由もない感情です。大人ってたのしいね。初めての経験をするたびに自分が変わっていくんだもん。30過ぎても青春が止まらないよ。わたしはわたしでがんばります。
【2017.03.08 Wednesday 17:09】 author : sayako oki
| 閑話/寫眞/取材記 | - | - |
 
著者近況
▼ようこそいらっしゃいました! こちらはフリーランス音楽ライター沖さやこによる個人ブログです。熱量を大事にしながら、嘘をつかずに文章を綴っています▼「本音で語る音楽人」をテーマに掲げた音楽系ウェブマガジン「ONE TONGUE MAGAZINE(ワンタンマガジン)」を運営しています。自主制作なのでお金は絡んでません▼書くお仕事頂けたらとても嬉しいです。詳細はプロフィールをご覧くださいませ

【動作確認】
・Google Chrome


管理者ページ



携帯電話閲覧
推薦作品
推薦作品
スペースシャワー列伝~宴~
スペースシャワー列伝~宴~ (JUGEMレビュー »)
オムニバス, MO’SOME TONEBENDER, NAHT, 怒髪天, fOUL, キセル, YOGURT-pooh
 
【エレキのグルー】にしびれていいかい
 
推薦作品
 (JUGEMレビュー »)

テンションだだ上がり
 
推薦作品